関数の極限の定義は

∀ε>0∃δ 0<|x-a|<δ→|f(x)-α|<ε
のとき、x→aのときf(x)はαに収束する

というものだけれど、この0<|x-a|<δの「0<」は(おそらく多くの書物で)さりげなく書いてあるけど実は重要。


なぜならば、
f(x)=x(x≠0),1(x=0)
というような、連続でない関数についてもx→0としたときの極限を考えたいから。
「0<」がなければ、連続な関数以外は極限が存在しないことになる。


と思ったけど、杉浦光夫の解析入門1では「0<」なしの定義をしてるね(p54注意1にわざわざ但し書きがしてある)。
まあ気をつければどっちでもいいという話か。


杉浦の解析入門も、小平邦彦の解析入門も、高木貞治の解析概論を参考にしてるんだと思うけど、どの本も合成関数の微分法(連鎖律)の証明が厳密じゃない気がするのだが。


【注意】
ここからは、本の証明にけちをつける部分なので、間違ってるかもしれない。→実際、間違っていたので削除します。
というか、そもそも、所詮ブログなので、これ以外の部分でも数学のことに関する記述は間違ってる可能性はあるのでご了承お願いします。


さて、上に挙げたどの本も本質的には同じ証明をしているのだが、記号は小平の本のものを用いる。


Δy=f'(x)Δx+ε1(Δx)Δx…(1)
Δz=g'(y)Δy+ε2(Δy)Δy…(2)
とおいて、小平の本では注意書きもなしに何気なく
Δε1(0)=0,Δε2(0)=0
としている。
高木・杉浦の本では、
ε1(0)=0,ε2(0)=0とするとε1、ε2が連続になる、ということで、ε1(0)=0,ε2(0)=0としている。
そういうわけなので、ε1(0),ε2(0)の値は勝手に定めたものなのだ。
1でも2でもいいはずなのだ(実際0以外の値を定めても、Δy=0のとき(2)式は成り立つ)。
ところが、後の証明で、ε2(0)=0ということを利用して証明している(高木、小平の本には利用したことが明示してあるが杉浦の本には明示してない)。
これでは、ε2(0)=1と定めたら定理は成り立たないことになる。
うーんどうなっているんだろう。
今度教官にでも聞いてみます。


【追記】
教官に聞いてみた。
っていうか聞くほどのことでもなかった。
Δxを十分小さくしてもΔy=0となるときには、f'(x)=0になる(容易に証明される)ので、f'(x)ε2(Δy)の項は0になってしまうので、結局ε2(0)の値は関係ないのだ。
これに替わる別の証明を考えていたときにはこのことに気づいていたのに、なんで気づかなかったのだろう。


まあそれはそれとして、ε2(0)=0を利用したかのような解析入門・解析概論の書き方はどうかと思いますよ。
本当にめんどくさいところは読者に気づかせないようにしてるのかも。