http://d.hatena.ne.jp/four_seasons/20061103

http://d.hatena.ne.jp/four_seasons/20061113
における僕の間違いについて。


ε2(0)=0と定義することは、定理の仮定にさらに余計な仮定を付け加えることになるのではないか、と思っていたのだが、それは間違いだった。
実際には、ε2(Δy)=Δz/Δy-g'(y)(Δy≠0のとき),0(Δy=0のとき)という新たな関数を定義し、その関数を利用して元の命題を証明しているだけなので、ε2(0)=0としても、定理の仮定に新たな仮定を加えているわけではないのだ。
ε2(0)=0というのは、新たな関数の定義であって、fやgについての条件を加えているわけではないのだ。
ε2を前述のように定義するとfやgについて、微分可能という条件だけからΔz=g'(y)Δy+ε2(Δy)Δy…(1)が成立する。
Δz=g'(y)Δy+ε2(Δy)Δy…(1)が成立すれば、以下ε2(0)=0を利用してlim[Δx→0]Δz/Δx=g'(y)f'(x)を証明することができる。
(1)式が成立する、というところが証明の肝で、ε2(0)をどんな値に設定しても、Δy=0のときには結局ε2(Δy)Δyは0になってしまうので、fとgが微分可能でさえあれば(1)が成立するのだ。
ε(0)をどんな値に設定しても、fやgに条件は課されてはおらず、任意のfやgについての議論ということに変わりはないのだ。


別の例を出す。

1cm×1cmのマス目が縦8列横8行の合計64個から成るチェス盤がある。このチェス盤の右上隅と左下隅(棋譜で言うとh8と1a)の2つのマス目だけを取り去ってマス目を62個にする。
さて、ここに1cm×2cmの長方形がたくさんあるとする。この長方形を互いに重ならないように、チェス盤からはみ出さないようにチェス盤のマス目の上に置いていって、この隅が欠けたチェス盤を完全に覆い尽くすことができるか?

というパズルがある。
その答えは「できない」で、証明は

チェス盤は白と黒の市松模様に塗られている。
ひとつの長方形は必ず白と黒のマスを1つずつ覆うから、もし長方形でこのチェス盤を覆い尽くすことができたとしたら、このチェス盤には白と黒のマスが同数あることになる。
しかし、今取り除いた2つのマス目は共に同じ色のマスであるはずだから、今あるのは、片方の色が30個、もう一方の色は32個だから、矛盾する。
よって覆うことはできない。

というのがよく知られている。


で、この証明で、「勝手に白黒に塗り分けていいのか、駄目ではないのか」というのが、僕の誤解に近い疑問である。
盤を白黒に塗り分けることは、8×8のチェス盤から隅の2つをとったチェス盤や長方形は1cm×2cmという条件を何ら強めていず、ただ見方を変えただけであるから、そのような塗り分けは正当である。


塗りわけというのが気に入らない、もう少し形式的に証明を書こう、と思うならば、「塗りわけ」というのは、各マス目に対して0または1の値を対応させる写像と見ることができる。
そのような写像は確かに存在するので、証明は正当と言えるわけだ。




と、ここまでの説明は、正直自分で読んでいてもよくわからない。
NKにおける証明を考えればもう少しわかりやすいかもしれない。
すなわち、件の証明でやっていることは要するにNKにおける「∃の除去」なのだ。
NKふうに書くと、

∃δ(Δy) [δ(Δy)=Δz/Δy-g'(y)(Δy≠0のとき),0(Δy=0のとき)]
ε2(Δy)=Δz/Δy-g'(y)(Δy≠0のとき),0(Δy=0のとき) 仮定(ε2は自由変項であることに注意)
Δz=g'(y)Δy+ε2(Δy)Δy…(1)
中略
lim[Δx→0]Δz/Δx=g'(y)f'(x)
lim[Δx→0]Δz/Δx=g'(y)f'(x) (ここで仮定が落ちる)

という感じ。
つまり、∃δ P(δ)→自由変項ε2でP(ε2)と仮定→lim[Δx→0]Δz/Δx=g'(y)f'(x)が導かれる→仮定が落ちてlim[Δx→0]Δz/Δx=g'(y)f'(x)
という流れだ。
ε2(0)=0だろうが何だろうが、とにかくそういう関数が存在することは、定理の仮定だけから導かれる。
その関数について、定理の仮定だけから(1)式が「導かれる」(この導かれる、というのは、形式的体系における「導かれる」である)、ということが本質的だ。
さっきまでの直観的な説明で、fとgに制限を加えない、と繰り返していたのは、∃除去の変数条件について述べていたのだった。


チェス盤塗り分けの方も同様に∃除去である。


とこの辺で僕がいかに誤っていて、実際はどうだったか、を僕の理解していることをもとに偉そうに説明しましたが、これも同じように間違ってるかもしれないので、注意してください。


わかりにくい僕の記事を読んでくれて、なおかつ誤りまで指摘していただいたid:arctanさんには感謝します。
ありがとうございました。