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将棋本オールタイムベストテン
http://d.hatena.ne.jp/doublecrown/20080125


もう締め切りを過ぎてしまったのですが、一応doublecrownさんの当該エントリにもトラックバックを送っておきます。
その名の通り、将棋本のオールタイムベストテンを選ぶ企画です。


選んだのは棋力向上に役に立つかどうかよりも、好きな本です。
はっきり言って本の雰囲気で選んでいる感も否めません。
でもまあ、本のベストテンなんて、だいたいそんなものだと思うので、気にしないことにします。


four_seasonsのベストテン

  1. 最強藤井システム藤井猛:日本将棋連盟asin:4819702084
  2. 四間飛車を指しこなす本1(藤井猛:河出書房新社asin:4309721869
  3. 羽生善治の終盤術1(羽生善治:浅川書房asin:4861370116
  4. 盤上のファンタジア(若島正:河出書房新社asin:4309264840
  5. 読みの技法島朗,羽生善治,佐藤康光,森内俊之:河出書房新社asin:4309721818
  6. 藤井システム藤井猛:毎日コミュニケーションズasin:4839908818
  7. 7手詰めパラダイス(詰将棋パラダイス週刊将棋:毎日コミュニケーションズasin:4839924627
  8. 新相振り革命(杉本昌隆:毎日コミュニケーションズasin:4839916721
  9. 王様殺人事件(伊藤果,吉村達也:毎日コミュニケーションズasin:483991611X
  10. 投了の真相(日浦一郎:毎日コミュニケーションズasin:489563650X



amazonのリンクは、6位から9位の『藤井システム』『7手詰めパラダイス』『新相振り革命』『王様殺人事件』については、MYCOM将棋文庫からの新装版へのリンクです。
あと、10位『投了の真相』など、いくつかは絶版になっているかもしれません(2chの棋書スレなどで聞くところによれば、毎日コミュニケーションズの本が絶版になるのはかなり早いとか)。


それではそれぞれについてコメントを。
1位 最強藤井システム
藤井ファンとして当然。
藤井システムを武器に一気に竜王へと駆け上る藤井先生の雄姿が見られる。かっこいい。
特に、羽生さんとの竜王戦挑戦者決定戦を制したあとの宴会で「亀がウサギに追いついたね*1」と冷やかされ、帰ってから食べた妻のおにぎりがおいしいあたりは感涙必至。
自戦記が充実している。
2枚銀を並べる構想が印象的な対深浦戦、終盤で逆転した屋敷戦、穴熊に組んであえて45銀と進出させた羽生さんの作戦(これだってかなり思いつかない作戦である)に対して54の歩を取って構想勝ちした竜王挑戦者決定戦、玉頭の壮絶な勢力争いを制した対谷川九段の竜王戦第一局など印象的な将棋が多い。


2位 四間飛車を指しこなす本1
初めて読んだ定跡本。
この本を読んで初めて、初心者の蒙昧な世界から抜け、将棋の世界に入ることができました。


3位 羽生善治の終盤術1
まあはっきり言って藤井ファンなので藤井先生の本をトップに持ってきたけど、技術的には、僕の知る限りでは、この本が将棋本の中でベストだと思います。
どこが優れているかと言うと、終盤のtacticsではなくstrategyをわかりやすい言葉で表現している点が素晴らしい。
tacticsというのは短期的戦略、strategyとは長期的戦略のこと。
これまでの本では速度計算のことや詰め手筋のことについてはたくさん語られてきたが、局面の方針ということについては、ほとんど語られてこなかったように思います。
そのことがこの本のテーマになっています。


日本人には自らの思考を言語化するのが苦手な傾向があるように思いますが、羽生さんはそれが本当にうまい。
そのような、「思考を論理的に語る」ということに関して言えば、将棋本に限らず、日本語の本全体の中でもこれほどうまくなされている本を探すのは難しいのではないでしょうか。


4位 盤上のファンタジア
ほんの最初の方しか解いてないのですけれども、いつか全部解くぞという本。
ただ、その解いてみた最初の十数問だけでも、明らかに世の中にあふれる詰将棋とはレベルが違う。
陳腐な言葉ですが、無駄がない。
詰将棋とはこういうものなのか、という感じ。
まあ僕なんかには真価は語れないのでこの辺で。


5位 読みの技法
ここまで、実際の局面を前にしたトッププロの思考に迫った本はない。
島八段の編著だからなしえた本。
将棋世界の某類似企画とは、クオリティで一線を画する。


6位 藤井システム
左美濃システムについて詳述。
左美濃をほとんど絶滅に追い込んだシステムを、開発者がちゃんと体系的に述べた本ということで希少価値が高い。
樹形図は熱い。


7位 7手詰めパラダイス
この本で詰将棋というものを知りました。
詰将棋に興味がない指し将棋のファンにも推奨できます。


8位 新相振り革命
最近相振りが流行っているけど、「現代的」相振りについて述べた本としては、杉本七段著のこのシリーズが最初ではないでしょうか。
この本で相振りというものを知りました。


9位 王様殺人事件
詰将棋を鑑賞することにこだわって、推理作家かつ詰将棋作家である吉村達也が懇切丁寧に解説した、詰将棋の本としては異色の本。
こういう、「新しい試み」みたいな本は完全に滑って、作者の熱意の空回りに終わることが多いが、この本に限っては成功しています。
実際、この本を読んで、詰将棋をひとつも解かずに解説を面白く読んで、しかも詰将棋がわかった気にさせられました。
ミステリ界で言ったら『続・幻影城』を、元の作品を読まずに読むみたいな?いや、読んだことありませんが。


10位 投了の真相
これは、プロ棋士が投了した実際の局面のうち、詰みがある局面が問題として掲載されている本。
詰んでいる局面なんて何が面白いんだ、と思われるかもしれませんが、これがアマには意外と難しいのです。
まあ僕レベルでは解けない問題が多いです。
でも、強くなるにはこういう詰みが読めるようになることが必要だな、ということがわかる本。
なんと言うか、アマチュアでも僕のように初段前後の人は、手がかりが少ないところから詰ますのが苦手のように思います。
えーと例えば、光速の寄せ2巻振り飛車で勝て!の111ページ第8問(居飛車の52金、42金、32玉、22角、14歩の囲いに対して、攻め方盤上に61飛、47歩、37歩、27歩、16歩、持ち駒金銀桂桂香香)のような局面とか。
で、こういう局面を詰ませられると詰ませられないとでは、将棋の力がだいぶ違ってくると思うんですよね。
なぜならば、勝ちパターンが増えるからです。




例えば、
・相手が無理攻めをしてきて、大きな駒得になった。
・自分の玉に対する相手の攻めは、攻め駒が足りなくて、と金による遅い攻めしかない。
・ただ、そのと金攻めが間に合えば、負けるかもしれない。
・自分の駒台にはたくさん駒が乗っているが、敵陣にはほとんど自分の攻め駒はない。
というような局面がしばしばありますが、「手がかりが少ないところから詰ますのが苦手」という人は、こういう局面は負けてしまうかもしれません。
敵陣に自分の駒が少ないので、敵陣に駒を打ったりしているうちに相手の攻めが間に合うかもしれないからです。


つまり、手がかりの少ないところから詰ますのが苦手なために、盤上における駒のmajorityという有利さは享受できるけれども、持ち駒を含めた駒のmajorityという有利さを十分に享受できないかもしれないということです。
局面の評価は、その人の、その局面から指し継いで勝つための能力に依存するため、詰ます技法が下手なことによって、有利であるはずの局面が有利でなくなることがあるということです。


ということで、そういった意味でも、プロ棋士の実際の投了の局面から実戦の詰みを学ぼうという本書には、そのような「アマには詰ましにくいような詰み」も多く含まれており、良書だと思います。
こういう本は案外ないですね。やはり売れないのでしょうか。
こういう本がもっと欲しいなあという意味でランキングに入れました。






以上のような感じで。
河出書房新社と毎コミばかりになってしまいました。
まじめに将棋に取り組まなくなってからしばらく経つので、もし最近ももっと棋書をちゃんと読んだりしてたら、『四間飛車の急所』や『最新戦法の話』も確実にランクインして、浅川書房がもっと増えていたことでしょう。
余談ですが勝又清和六段は数学科出身だとか。だから話がわかりやすいのか。

*1:将棋ファンには説明不要だが、亀は藤井猛現九段、ウサギは羽生善治現二冠のこと。藤井先生と羽生さんは同世代だが、若くしてトップ棋士になった羽生さんに比べると研修会経由で奨励会に入会した藤井先生はデビューが遅れた