奥歯が、どこかで硬いものでも噛んだのやら、知らないうちに欠けてたらしい。
歯科医のお姉さんが「銀歯が今まで一本もないから銀歯にしちゃうのかわいそうかなって。保険診療外の白い詰め物もあるから検討してみてね(はぁと)」とかわいらしいことを言うので検討してみたが、親が「保険診療で十分」と言うので、無駄金は十分払わせてるわけだし、と妥協して銀歯にすることにした。


父親の歯に銀歯が入ってるのなどを見て、なんとなく汚らしいイメージを持っていた。
「大人の男」がするもの、というイメージだった。
例えて言うなら子どもの頃見た父親の醜悪な局部のような。


最近たまーに服屋(量販店だけど)に行くようになった程度に色気づいてるので、将来女の子に見られて幻滅されたら嫌だな、とも思った。


ただ妥協すると決めた以上は妥協しないといけない。
考えてみれば別に不衛生なんてことは全くないのだし、歯の治療歴がある、という事実を示すだけだ。
手術跡のようなもので、恥じるような類のものじゃない。
恥じるようなことがあるとすれば、死すべき定めの人間に生まれてきた、ということくらいだ。