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エルサ(CV:イディナ・メンゼル)が歌う"Let it go"は日本人には「レリゴー」と聞こえる。
軽く上歯茎に舌をつけて出すこの母音に挟まれた弱いtの音は"flap T"と呼ばれる音で、"d"や"r"の音に近い。*1
"Lei it go"では、ほとんど日本語のラ行に近い音として聞こえる。


一方、"Let it be"でポール・マッカートニーは、どっちかというと「レディビー」と聞こえるような、"d"に近い音として発音している。


また、"go"の方ではほとんど2番目のtの音は脱落して"letigo"という感じで発音しているが、ポールの方は2番目の"t"もかろうじて聞こえる。まぁ録音や年代によっても違うから一概には言えないが。あと、"let it"と"be"の間にアドリブで「溜め」を入れる場合もあり、この場合はより"let" "it" "be"と区切って言うのに近くなり、サビの3回目の"let it be"のようにリズム上速く発音するところではより2番目のtは省略される傾向にある。
しかしどちらかと言えばポールは"r"よりも"d"という印象を受ける。


このエルサとポールの2人の間には、大西洋と40年の時間が横たわっているから、個人差以外にもその文化の違いが発音を分けたのかもしれない。僕がちょろっとぐぐったところでは、"flap T"はイギリス英語にはないアメリカ英語独特の現象とのことだったが、僕の耳にはポール・マッカートニーのtもかなり"d"っぽく聞こえる。ただ、印象としては確かに「本来の音」から外れるほどアメリカっぽいというのはわかる。


"Let it be"を、エルサのように「レリビー、レリビー」と歌うことを想像してみると、なんとなく厭らしい感じというかこなれた感じというか、本当に苦境に陥ってある意味不器用で投げやりなしかし乾坤一擲のlet it beを絞り出す、というよりは、軽薄な流行歌を喉鳴らして歌ってる感じがしてこなくもない。特に、最初の

Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom,
let it be

の部分の"let it be"は空から単語が3つ降って来たように、そっと置くように歌うべきだと思う。


一方で"Let it go"はアメリカの女の子なんだからその発音はくだけた「レリゴー」じゃなきゃ絶対ダメで、「レディッ(t)ゴー」だとまだありのままになれてない。

*1:このtの音はなんとなく聞き覚えがあったが、詳しくは藤田佳信(2014)『「ネイティブ発音」科学的上達法』講談社ブルーバックス、で知った。