朝ドラ

朝ドラを見る習慣がなかったが、先期の朝ドラ『あさが来た』からなんとなく見るようになった。
今期の『とと姉ちゃん』も常子の子ども時代以降はだいたい見ている。
が、僕はYahoo!テレビの「みんなの感想」の叩き中心の感想に毒されてしまったのか、あるいはあれに触れなかったとしても自然とそう思うようになったのか不明だが、いろいろ不満点がある。

(1)当時の生活のリアリティが伝わってこない
太平洋戦争末期は、鞠子も髪が抜けるくらい栄養が取れずかなり大変な暮らしだったはずだが、全くそんな感じが伝わってこなかった。世界観を伝えるために何が足りていないのかはわからないが、全てが現代の出来事に見える。
(2)常子がどういう人物なのか、何を軸にして行動しているのかが伝わってこない
当初は「ととの代わりを果たして家族を守るため」という目的意識が多少見られなくはなかったが、歯磨き粉の失敗の件以降?ただただ周りで巻き起こるドタバタをやり過ごすだけで、常子が何らかの意思を持って何かをするという場面がない。
だから、「雑誌を作る」というこのドラマ最大の見どころとなるであろう局面に差し掛かっても、常子の核となるものがわからないので、視聴者は「あの常子だったらこういう雑誌を作ろうとするだろうな」というイメージが全く浮かんでこない。
僕のお気にいりのキャラだが"落ちぶれてかわいそう"と思われるためだけに再登場した綾を見て、「やっぱりお金を儲けないと」と思ったのだな、ということしか、雑誌を作ろうとした動機としては伝わってこない。
現実の「暮しの手帖」という雑誌は、かなり高い志を持った雑誌というイメージなので、ドラマの中で金儲けのためだけに急ごしらえで作られる雑誌とはイメージのギャップが大きい。

常子のキャラが見えないということと関連して、鳥巣商事の人々やお竜や甲東出版、さらには星野武蔵や青柳や森田屋の人々が、何のために出てきてそして去っていったのかがわからない。
常子が何を考えているかわからないので、常子がこれらの人々と交わって何を受け取ったのか、どう成長したのかが見えてこない。
お竜のようなキャラは作劇上何の意味があるのかさっぱり分からない。下層の人を見て常子が「自分は恵まれてる」と実感するため?
鳥巣商事の人々や甲東出版の人たちにはかなりお世話になっているはずなのに、かなり無礼な態度を取っているように見えるし、その理由がわからないので見ていてストレスがたまる。
鳥巣商事の早乙女は、「当初は衝突もしたが、彼女なりの考えがあってやっていたのだとわかった」というような描写がされていて、クビになった時も優しい言葉をかけてくれたのに、その言葉を無下にして、最後も感謝もせず去っていった。
甲東出版ではお世話になってきた人々が戻ってきてくれても喜ぶどころか(雇用を継続してくれているだけでもありがたいだろうに)「自分のやりたい雑誌が作れない」「給料が低い」と不満たらたらで、その割に、独立した後ものこのこアドバイスを聞きに来る。客観的に損得だけで言っても、もっと雑誌作りのノウハウを盗んでから出て行ってもいいのに、焦って出て行ったようにしか見えない。
不快というか、行動の原理がよく分からないので困惑させられる。

やはりこの批判を列挙するスタイルは「みんなの感想」に毒されているかもしれず、生産性に欠けるのでこの辺にしておいたほうがいいかもしれない。
先期から朝ドラを観始めてわかったのは、大衆向けに分かりやすく作られており、あんまり深みがないなあということだった。(『あさが来た』批判は割愛)