村田沙耶香『コンビニ人間』

『コンビニ人間』、途中からはパラパラページをめくっただけだが、読んだ。

凡庸な異常者である白羽のような「普通」を周りは求めているし、その白羽も変人ぶっているが実はその「普通」を内面化している(からこそ自らの劣位を逆転させようと躍起になっている)。
また、突き抜けた異常であり通常考えられるような「人間性」を欠く主人公はしかし「コンビニ」を通じてある種の社会参加を果たしており、その姿は却って白羽よりも人間らしい。
人間らしくないからこそ、コンビニというシステムを通じてある種過剰にこの社会に適応してしまい、それを見た一見異常な普通人白羽は主人公に「異常さ」を感じて拒絶する。

ということで図式としては綺麗なのだが、綺麗すぎてあんまりというか。
白羽の造形にリアリティがなさ過ぎてうーん。
つまり、自意識過剰に言ってしまえば、僕のようなクソ(や日本語のネット上でよく見る言説)を戯画化した存在が白羽なのだろうが、僕はここまでひどくないぞと。
なんか、「老人が描いた『現代の若者』の風刺」みたいな感じで、鋭く批判してはいるけど、なんかずれている。

主人公を流行りのサイコパスにすることで、また、白羽を表層的な戯画化されたキャラクターとして描くことで、図式としては綺麗にできあがっているんだけど、その明瞭さのためにこの作品では省かれている部分を描く作品を読みたいと僕は思う。
まあ要するに「(俺の考える)人間が描けていない」という例の老害的批判かもしれないが。