糸谷新竜王のインタビュー。
http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-8c62.html

最近は(コンピュータ)ソフトが強くなり、人間はまだまだ終盤が間違っていることが多いと分かってきたので、そこをもっと鍛えれば、もっと正確に指せるのではと思います。



これなるほどと思った。
僕の誤った&偏った将棋史認識によれば、羽生世代が登場して終盤の技術が向上→終盤はだいたいわかったから序盤研究を頑張ろう
というのが序盤研究が重視されるようになる1つの流れとしてある*1。まぁ最近は例えば島朗の『角換わり腰掛け銀研究』のような突っ込んだ研究からはまた揺り戻して「広く浅く」的な流れになったとかそうじゃないとか聞いた。*2まぁ何にせよ所詮外野なんで棋界こぼれ話的なところしか情報源はないわけですが。


「終盤はだいたいわかった」は今でもプロにとっても「難しすぎる」終盤のようなものがある以上言い過ぎではあるが、「理論的には解明することができる」という共通認識があり、かつ、「その結論にはある程度エフェクティブに到達することができる」と思われている(いた)ように思う。


ところが、ここ数年で現れてきた状況として、コンピュータソフトがプロ並みになってきた&それが認知されてきたということがあって、(僕はプロの棋譜の、ソフトによる検証の結果については詳しく知らないが)糸谷によれば「人間はまだまだ終盤が間違っていることが多い」とわかってきた。
やはり「分かってきた」という言葉を使っているということは、予想より間違いが多かった、プロ棋士の間で共有されていた自分たちの終盤に対する理解度の認識について修正を迫られた、ということであると思う。


そういうような自分たち人間はまだまだ間違いが多かった、という事実は逆に言えば、まだまだ改善の余地があるということであり、人類としてはまだ「変身を2回も残している」。
また糸谷ら若手にとっても、現棋界で最高の力を保持する羽生世代(と渡辺)もまだ完璧ではないということは、自分たちがそこにつけこんで世代交代を実現することができる可能性があるということでもある。
このことは単に上の世代に対する挑戦というのみならず、「現在示されている人類の最高到達地点を上回ってみせる」という宣言でもあり、たいへん頼もしい。*3


カッコつけて言うなら、「羽生は神(God)だと思われてきたが、我々はa better godを発見した。それは、真理である」ということ。*4

*1:序盤研究が重視されるようになった要因はこれ1つではないとは思うが、1つの要因としてこういうことがあるということ

*2:といいつつも「矢倉91手組」のような突っ込んだ研究も水面上下問わず継続してはいるはず

*3:同い年なのにそんな老人みたいなことを言ってたらダメだけど

*4:ここで頭が悪い人はデウス・エクス・マキナとか言うんだろうが、コンピュータは単に真理により近づくための手助けをしてくれただけであり、コンピュータが新たな神になったというわけではない