物理か数学か

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この記事で紹介されているpannenkoek2012氏の情熱が学問的と言えるものであるのは明らかだが、それは物理的であるか、あるいは、数学的であるか。
いっけん、ゲーム内の物理を探求する、という意味においてはまさに物理的であるようにも思われる。
しかしながら、彼の情熱は、むしろ数学的であると思う。
というのは、これらの探求は、一定のルール(ここではゲームの仕様)のもとで「『取れないコイン』を取れるか?」とか、「Aボタンを押さずにクリアできるか?」とか、*1プレイの空間におけるある種のいい性質を持つプレイの構成ということもでき、僕にはそれはまさに数学的であると思うから。
ネタとしては(ゲーム内)物理を使っているが、その関心は、こういうプレイを構成できるか?というところにあり、それらのプレイというのは、数学的実在の住む世界、platonistの宇宙に住んでいると思うから。

などと言っていて気づいたが、別に物理もそのような探求を行う場合も全然あるのでは?という気もしてきた。
求める対象がどこの宇宙に住んでいるか、というような形而上学的なことよりも、数学と物理はその探求の手法・流儀によって区別されるのでは?と。

まあ線引き問題には深入りしないことにして、ともかく、次のことは言えるだろう:
表層的な理解によれば、「ゲームの仕様を理解しようとしてるのね」ということになるかもしれないが、実際に彼が行っているのは、むろん仕様を理解することもそうであるが、それを前提として、「その仕様の下である種の困難なプレイが実現できるか」ということでもある。

*1:(ゲーム内の離散的時間ごとの)操作の列から成る、という言い方もできる