time-frame

NEDCは、凍結胚に有効期限はないとしている。しかし技術の耐久年数によるタイムリミットはある。世界で初めて凍結胚を使った体外受精での出産は1984年、オーストラリアでのことだ。

27年間凍結されていた受精卵、無事赤ちゃんに 最長記録 - BBCニュースより)

の「しかし技術の耐久年数によるタイムリミットはある。」はおそらく誤訳で、正しくは、「(凍結胚は無期限と言っても)技術が開発された年によって(それは有限の昔なので)受精卵の最大経過年数は限られている」もっと意訳するなら、「受精卵凍結の技術よりは古くない」だろう。
訳しても日本語だと意味が通りにくいが、要するに技術が開発されたのが1984年(の少し前頃?)だから、受精卵を凍結してからの経過年数は最大でも35年程度であり、「60年間保存されていた凍結胚」とかはそもそもまだ存在していないよ、ということだ。
この誤訳だとそもそも文の意味が分からないし、文脈的にも次の「世界で初めて〜」の文が唐突になってしまう。

しかし原文は

According to the NEDC, the shelf-life for frozen embryos is infinite. The time-frame is limited, however, by the age of the technology - the first baby born from an embryo frozen after IVF was born in Australia in 1984.

で、"time-frame"がここでは「凍結胚のありうる経過年数」の意になるとか、結構難しい。
語としては完全に一般的な語であり、この意味はほとんど文脈だけから決まっている。
ネイティブに近い英語話者は誰でも"time-frame"と聞いてすぐこの意味だとわかるのだろうか…?
と考えてみたが、やはりネイティブでもこの文を最後(1984.)まで聞かないと冒頭の"time-frame"の解釈は定まらないものと思われる。
ただし、"infinite"という語の直後に"limited"というある種の対義語が来るので、「『凍結させた受精卵が無限』と言うけれども、無限というわけではない」という話だということはただちに分かるが、普通にとるとこの誤訳のとおり、「(技術的に)無限には保存できるわけではない」という意味だと思うと思うので、ややトリッキーな言い方ではあると思う。
これがBBCらしい若干スノビッシュなレトリックなのか、それともごく一般的な言い方で「おっ」と思うようなものではないdaily useのか、そこらへんの温度感がわからないので気になる。