結構楽しめた。
エリンのキャラがよかった。
個人的には、学者が「学者キャラ」じゃなく出てきて、キャリアとかで悩んだりしている時点でかなり推せる。
パティのキャラもよかった。
学はないけど、人々の心の機微や、NYの地理や歴史に通じており、
たった一人で「庶民」「人間的な温かみ」「人文科学」等の要素を代表している、重要な役割。
ほんの少しでも、実際の歴史や地理に即しているか不明でも、NYのローカリティというものを感じさせてくれてよかった。
エリンとパティ以外の主人公チームのキャラの掘り下げが若干甘い気もした。
ホルツマンとか名前はいいけど人々の脳内の「天才科学者キャラ」に頼りすぎ。
アビーもキャラわかるようなわからないような(真面目に見てなかったからかもだが)で、最後のエリンが霊界から救い出すシーン(関係ないけど『ヘラクレス』を連想)も、いまいち感動できなかった。
序盤の「12年の歴史を持つ当大学〜云々」とかのギャグで笑った。
というかギャグてんこ盛りの序盤のあの雰囲気(電動式で落下するオルドリッチ邸のろうそくとか)を保てるとよかったかも。
悪役がいわゆるインセル男性というのもリアリティがあってよい。
悪役
男性・恋愛強者でない
主人公
女性・恋愛強者でない
という図式で、しかし、悪役男性を「癒やす」とか「愛を伝える」とかじゃなく、
ある意味出世やルッキズム等の価値観にはある意味では乗れてないあるいは興味がない主人公チームが超克する、
というのがこう、なんというかある意味では女子校的でよい。
同じ乗れてない者同士だけど、それを気にしてうじうじするか、それとも何か自分の好きなようにするか、という対立であった。
市長の食事のにエレンが乱入するシーン、カタルシスがあって最高。この映画で一番よかったな。
お上品なエスタブリッシュメントの人々、そして上品な女性たち(もちろん、世間の空気を読んでちゃんと「女性的」でもある)に、不作法で中身はナードなエリンが対峙する、
その時に「こっちはモテないから・科学者で真実を知っているから・貧しいから実は正義なんだ」とかそういう転倒した選民意識みたいなのもなくてよかった。
一言で言うとさわやかなのがよかった。
ただ、その屈託のなさが昨今の情勢に配慮しすぎて作り事めいて感じられる、生身の葛藤がない、と批判する向きもあろうが、個人的にはまあそういう映画があってもいいじゃないですか、とは思う。
しかし浅薄ながら指摘せずにはいられないことは、2021年の今見ると、ゴースト=コロナウイルスのように読めてしまうのが面白い。(巨大な災厄、NY市長の無策、「科学者」を無視する当局、「チャイナタウンに行きたくない」とタクシーの運転手が言うところ等々)
もちろん偶然だが。