草野さんの「人間宣言」

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ついテレビの「中の人」は箱の中の小人*1、内面を持たないキャラクターであって、我々と同じように悩み、疲れる人間ではないかのように感じ、番組は永遠に続くかのような錯覚を抱いてしまう。
しかし20歳を過ぎた(いや、もっと遅かったかも。29歳で働き始めてからとか)ある日、「タモさんは何週間も海外に行ったりできなかったんだ」と気づいたときは慄然とした。
笑っていいとも!」のために、タモリさんはどれだけ自由を犠牲にしてきたのだろう。自由が好きそうな人なのに…

この『世界ふしぎ発見!』のお馴染みの面々もなんとなくいつまでも変わらない(1人途中から出なくなられたが)感じがあったところ、青天の霹靂のような終了宣言とともに草野さんから「天職であった」とまでの発言が飛び出した。これまたタモリさん以来ハッとさせられた。

草野さんや黒柳さんや竹内さん、スタッフの方々は、この、視聴者からすれば1週間のほんのひとときの楽しみでしかないこの番組に自らの人生を賭けて臨んでおられたのだ。
これに人生を賭け、その過程では何かを犠牲にしたかもしれないけれども、良質な番組を届けるために専心され、実際そのような素晴らしい番組であり続けたと思う。この草野さんの「人間宣言」に際し、自分は消極的なファンにすぎなかったかもしれないが草野さんらに感謝の思いを抱くと同時に、同じ等身大の人間として尊敬の念が湧いてくるところである。

僕も今となっては別に人並みだと思うが、小さい頃は「よくものを知っているね」と褒められることがしばしばあった。
しかしそのときに僕はよく、「いやこの知識、この前『世界ふしぎ発見!』でもやってたし、テレビとかでも何度も取り上げられてるじゃん?それを漫然と見ているだけでもこのくらいの知識は君にも得られたのではないかな」と生意気なことを思っていた。

しかしそのような「これ見とけばだいたい良質な情報が得られるっしょ」という番組でなおかつ見ていて面白い番組は、他には簡単には思いつかないところであり(たとえば「諸説」でまとめる『チコちゃんに叱られる!』より丁寧だと感じる)、「『世界ふしぎ発見!』でもやってたし」などとはとんでもない話で、『世界ふしぎ発見!』というありがたい質の高い教養番組によってこそ、多くのことを学ばせてもらったのであろうと感謝の思いが湧いてくる。

*1:このテレビを「箱」と表現するクリシェももうそろそろ賞味期限切れか。実際子どもの頃既に箱ではなかった。しかし真面目に考えると、「中に人がいる」ことを想定するためには、仮に90年台のブラウン管くらいの厚さであったとしても「箱」と表現するモチベーションがあったかもしれない。「板の中」というコロケーションはなんとなく据わりが悪い。