(ネタバレ)モンスターズ・ユニバーシティより

モンスターズ・ユニバーシティの中のセリフをネタに、英語について考えてみたい。

It would have taken you a miracle for you to...

(ネタバレをなんとなく避けるために迂遠な言い方→)(物語中盤、第1ラウンド終了後、校長がマイクに冷たく言うシーンより)

仮定法について

典型的な仮定法過去完了であるが、to...に続くのは、to qualify for a next roundとかそういう内容。
よく言われることであるが、仮定法においてはif...節が必須ということはまったくない。
ここでは、仮定法が使われるゆえんである「事実に反する仮定」は、形式主語Itのに対応するto不定詞の中身である。
つまり、「(無理だったであろうけれども)次へ進むには奇跡が必要だったであろう」ということ。

forについて

そして、「奇跡が必要」ということを前述のように形式主語Itを立ててto不定詞で表しているが、to不定詞の内容の主語を示すために"for you"が使われている。

これも言うまでもないことだが、この"for"は「ために」という意味だろうか、とかそういう逐語的な訳の当てはめはまったくナンセンスである。
このforというのは単にto不定詞以下の内容の形式的な主語を示すため、syntacticalな役割を果たしているにすぎない。
for単独で何らかの意味を持つというものではなく、このfor ... to ...というto不定詞という名詞句において、全体として一定の意味を示すために、「to不定詞の意味上の主語はこれですよ」ということを示すのが役割である。
語は全て、何らかの対応する存在物に対応づけられる、という素朴な描像が成立しないことがあらわになる。
semanticsと独立にsyntaxが存在するということを認識することが第二言語を理屈で理解するためには必要である。
が、そもそも「言語というのはなにかルールに沿って語を配置するもの(i.e.言語ゲーム)である」ということ自体の認識が薄い人が多いように思う。

takeについて

そして最後に、語法の問題だが、It will take you 5 minutes to go to the station.とかの"take"(要する)はコスト、時間の他にこういうより抽象的な「必要」にも使うことができるのだなあ。