間接疑問文と取るか関係代名詞節ととるかで意味が異なるケース

I don't know what we should purchase.という文において、"what"は間接疑問文(節)を導く疑問詞とも解釈できるし、関係代名詞とも解釈できるわけだけど、この2つは意味において区別できないかと思っていたが、ChatGPTと会話する中で、文脈によっては違う意味を持ちうることに気がついた。
違う意味を持つというか、正確に言うと、ある解釈の下では、関係代名詞としてしか解釈できないケースがある、ということ。

具体的には、間接疑問文の場合には解釈は1つだと思うのだけど、関係代名詞ととる場合、間接疑問文の場合の解釈とは別に、ある種の文脈の下で別の意味を持ちうる。

まず、間接疑問文とみる場合、「何を買うべきか分からない」という意味になる。当たり前の解釈である。
関係代名詞の場合も、「何を買うべきかわからない」という解釈は当然可能で、特段別の文脈が指定されていない限り、こう解釈するのが自然ではある。
だが、たとえば次のようなシチュエーションを考えてほしい:
ハロウィンの飾り付けのために何を買うか、グループで相談している。
誰かが「そうだ!スーパーカリフラジリスティックスティック(棒)を買ったらどうだろう」と言う。
自分はスーパーカリフラジリスティックスティック(棒)なるものは聞いたこともないし、知らない。
が、自分以外の他の人はわかったようで、「そうだそうだ」「それを買おう」などと言っている。
どうも自分が知らないだけで、他の人はスーパーカリフラジリスティックスティック(棒)を買うことでまとまったようだ。

こういうようなシチュエーションの場合でも、
I don't know what we should purchase.
ということができる。
しかし、この場合、この文は「何を買うべきか分からない」という意味ではない。
「何を買うべきか」は決まっているのだから。それはスーパーカリフラジリスティックスティック(棒)だ。
ここでは、その「みんなが合意した我々が買うべきもの(=スーパーカリフラジリスティックスティック(棒))」のことを、自分は知らない、という意味だ。
文脈を全部盛り込んで意訳すると、訳文としては「我々が買うことになっているスーパーカリフラジリスティックスティック(棒)なるものがいったい何なのか、自分には分からない」とでもなるだろうか。
ここでは「我々が買うことになっているもの」はスーパーカリフラジリスティックスティック(棒)に置き換え可能である。ここで「我々が買うことになっているもの」という確定記述は、単に指示的に使われている。これはキース・ドネラン(Keith Donnellan)が記述の指示的用法として指摘したもの。(たとえば、我々が買うことになっているものが「スーパーカリフラジリスティックスティック(棒)」だと思っていたのは私だけで、実はみんなが買うべきと合意したものは「カリフラワー」であり、カリフラワーであれば私も知っていた、という状況を考える。このとき、"I don't know what we should purchase"というときに"what we should purchase"は客観的な事実に基づいて「カリフラワー」と解されるべきではない。事実私はカリフラワーのことくらいは知ってるのだから。ここではwhat we should purchaseは単に「スーパーカリフラジリスティックスティック(棒)」を指し示す目的で指示的に使われており、通常の確定記述とは区別されるべきである)

「何を買うべきか分からない」という普通の解釈と、文脈限定的なこの解釈が異なる点は、普通の解釈だと何を買うべきかは特定されていない(少なくとも自分には)のに対し、この特異な解釈では、何を買うべきかは決まっている。決まっているけど、「知らない」だけ。
whatを関係代名詞として使う場合、疑問詞ではないので、このように「何を〜」という意味にならないで特定された買うべきものを名指すことも当然可能となるわけだ。

また、この2つの解釈で、"know"の意味も異なっていることに注意。
「何を買うべきかわからない」の解釈だと、"know"は「分かる」「理解した状態である」という意味で使われている。
一方、「買うことになっているもの(特定されている)が何なのか自分には分からない」の解釈での"know"は、「見知っている」「見たことがある」「どういうものか認識できる」の意味である。
https://dictionary.cambridge.org/dictionary/learner-english/knowにある(HAVE INFORMATION)と(BE FAMILIAR WITH)の違い。


まぁそんなこんなで、大概の場合"I don't know what〜"式の文の"what"が疑問詞か関係代名詞かはどっちと思っても意味は変わらないのだけれど、ある種の文脈の下でこの文が、whatが関係代名詞としてしか解釈できないような意味を持ちうることをみた。